弁護士コラム

第23回

『取締役の退職代行(辞任代行)』について

公開日:2024年9月18日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水と申します。
退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から、「これは」と思うことをコラムにします。

第23回のコラムは『取締役の退職代行(辞任代行)』について書きたいと思います。
代表取締役や取締役、執行役員、社員、医療法人や社会福祉法人の理事の方からの退職代行(辞任代行)のご相談、ご依頼はとても多いです。

例えば、従業員から取締役、代表取締役、執行役員、理事になるように社長に頼まれて快く就任したものの、労働時間は長いし、責任も重いので、辞めたいのに、辞めさせてもらえないなどの相談事案が多いです。

代表取締役、取締役、執行役員、社員、理事であっても退職代行(辞任代行)が利用できます。
お困りでしたら、いつでも私までご相談ください。力になります。

取締役の退職代行(辞任代行)については、創業当時から、55,000円の追加費用はありません(ただし、損害賠償対応プラン、未払い報酬対応プランを除く。)
基本プラン55,000円では、訴訟外の損害賠償請求に対して対応します。

では、内容に入ります。

目次

1.即日退職(即日辞任)の法的根拠について

取締役、代表取締役、執行役員、社員、理事の方の退職(辞任)は、退職代行の場合で退職する場合には、即日退職(即日辞任)になるのが一般的です。即日退職(即日辞任)とは、退職通知したその日が退職日(辞任日)になることを言います。

即日退職(即日辞任)の法的根拠について
取締役、代表取締役、執行役員、社員、理事の方は、会社と委任契約を結んでいます。

委任契約は、民法651条によれば、「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」となっています。
取締役の方が、従業員の雇用契約(民法627条第1項)よりも退職ができるように定められています。
すなわち、民法651条第1項をもって即日退職(即日辞任)ができます。

2.損害賠償請求について

もっとも、退職者(辞任者)は、会社の不利な時期に、退職(辞任)した場合には、損害賠償を負担する可能性があります。そこで、取締役、代表取締役、執行役員、社員、理事を退職にあたっては、損害賠償を請求されないように弁護士から法的アドバイスを受けてください。お困りの方は、私まで遠慮なくご相談ください。

参考条文
民法651条第2項によれば、民法651条第1項の規定により委任の解除(退職)をした者は、次に掲げる場合には、相手方(会社)の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
① 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
② 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。

なお、弁護士としては、やむを得ない事由(理由)を詳しくヒアリングします。
やむを得ない理由の例としては、長時間労働、パワハラ、セクハラ、体調不良などが該当します。やむを得ない理由については、損害賠償請求されるか否かについて、とても重要な検討になります。

3.報酬が未払いになった場合について

取締役(代表取締役、執行役員、社員、理事)と会社との関係は、委任関係でありますので、労働基準法が適用されませんので、所轄の労働基準署に相談しても動いてもらえません。
そこで、報酬(給料)が未払いになった場合には、弁護士に相談するのがベストです。

未払い報酬回収プラン(着手金なしの成功報酬型)

回収額の22%(訴訟提起した場合には、33%)になります。
※着手金がかかりません。
※全てのご依頼を受ける訳ではありません。事前にご相談ください。

4.損害賠償対応プランについて

取締役、代表取締役、実行役員、社員、理事の方が退職した場合に、会社からの損害賠償請求に対応します。
追加費用なしで、地裁、簡裁の訴訟に対応します。
※交通費等の実費は別にかかります。

損害賠償対応プラン

25,000円
基本プランと合計 80,000円になります。
※全てのご依頼を受ける訳ではありません。事前に私までご相談ください。

5.役員変更登記について

次にわかりにくいポイントとしては、取締役、代表取締役、社員、理事を退職(退任、辞任)した場合でも会社(医療法人、社会福祉法人)が役員変更登記をしないケースがあります。
では、役員変更登記を会社がしない場合には、どのようになるでしょうか?

まず、役員について退職(辞任、辞任)しているため、変更登記については、退職(辞任)とは関係がありません。
すでに退職(辞任)しているので、あとは、表見取締役(表見理事)の問題になるだけです。
表見取締役の問題については、他のコラムで解説しますが、簡単にまとめると、内部的には、退職しているものの、外部的には、取締役、代表取締役、社員の表示(外観)が残っているため、外部的な責任を負うか否かの問題になります。

会社法第429条によれば、
(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うとされています。

しかしながら、実際の会社取引にあたっては、取引の相手方は、取締役、代表取締役、社員の確認をすべきであるので、実務上では、退職後、変更登記がされていない場合でも取引相手に対して責任を負うことは少ないです。
したがって、登記が残っていてもそれほど心配する必要はありません。

6.解決事例

解決事例①

取締役の退職代行(辞任代行)の事例
労働時間の問題があるので、取締役になることを会社から勧められる。毎月経費を10万円使うことを条件に取締役になることを承諾するもののなった後で、経費の承諾を会社から受けることはなかった。また、退職した場合には、損害賠償請求すると会社から脅されていた。
私の方で受任し、会社に辞任の通知(受任通知書)を送り即日退職(辞任)になった。
結局のところ損害賠償請求はされなかった。
会社には、長時間労働について、安全配慮義務違反が認められるもののその違反については交渉材料として退職させた。

解決事例①のポイント

第17回コラムでも書いている通り、通知したその日が退職(辞任)日となっています。また、損害賠償についても弁護士が交渉することで、請求されていません。

解決事例②

執行役員の退職代行(辞任代行)の事例
2ヶ月分の役員報酬が支払いされないため、退職代行(辞任代行)にて退職した。
通知したその日を即日退職(即日辞任)としている。
やむを得ない事由(理由)については、報酬が3ヶ月支払いされなかった

解決事例②のポイント

即日退職(即日辞任)になっているのは、コラムでも述べている通りです。

解決事例③

代表取締役の退職代行(辞任代行)の事例
共同代表取締役の会社であったので、株主兼代表取締役に退職通知した。
株式譲渡についても同時に解決する必要があった。会社貸与品、社用車の貸与があった。

解決事例③のポイント

株式譲渡については、譲渡契約書を取り交わした。
退職の時期については、コラムの通り即日退職(即日辞任)となった。
会社貸与品、社用車の返却については、事前に打ち合わせした通りに行った。

7.まとめ

取締役、代表取締役、執行役員、社員、理事の方でも、退職代行を利用できます。
また、弁護士に委任することで、窓口は、弁護士になるので、会社とのやりとりが不要となります。
退職代行(辞任代行)は、役員の方にとっても有効な退職方法です。
退職代行(辞任代行)をご希望の方は私までご相談ください。
兼務役員の諸問題については、次回以降のコラムで説明します。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。