弁護士コラム

第81回

『内定辞退代行』について

公開日:2025年2月26日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から、「これは」と思うことをメッセージと共にコラムにします。

コラム第81回は『内定辞退代行』についてコラムにします。

5分程度で読める内容になっています。

内定辞退代行の依頼については、3月が一番多くなります。

内定辞退についてはメールで辞退する旨の連絡をすれば十分という意見もあります。

しかしながら、内定辞退が入社日の直前であったり、内定先の担当者が辞退するにあたって辞退者に過剰に連絡をしてくる場合などは、弁護士に内定辞退の代行(代理)を依頼し、安心感を買うのも「あり」です。

数年前に、読売新聞で私自身が内定辞退について記事を書いています。

その記事では、①内定辞退の法的性質、②辞退の時期、③損害賠償の可能性、の3点から論じました。

今回も①②③の点からコラムにします。

目次

1.①内定の法的性質

内定の法的性質は、「始期付解約権留保付労働契約」であると解されています(最高裁昭和54年7月20日判決)。「労働契約」であって、内定の時点で労働契約が成立するのがポイントです。「始期付」とは、契約成立日とは別に契約開始の時期が定められていることを意味します。

したがって、内定成立後は、企業側から内定取消を行った場合には、一定の厳格な要件でなければ、損害賠償の対象になります。

それとは逆に、働く側から内定を辞退することは、労働契約を辞退することになりますので、場合によっては、損害賠償の対象になり得る場合もあります。

2.②辞退の時期

とある弁護士の方が、そのコラムで、民法第627条第1項が退職を申し出てから14日間が必要であるので、内定辞退も14日以内に辞退するのがおすすめですと書いてありましたが、内定辞退には、14日間の制限は存在しませんし、一般的な見解でもでありません。独自の見解ですので、14日を切っていたとしても内定辞退が可能です。

ここまでをまとめますと、内定辞退については雇用契約の開始日までは辞退できるという結論で構いません。

極端なことを言えば4月1日から勤務開始日であれば、3月31日までに辞退すれば内定辞退になります。

3.③損害賠償の可能性

退職時の損害賠償請求は極めて限定的な請求になります。雇用契約上の損害賠償請求の裁判例はとても少ないことがする理由と言えます。その退職とパラレルに考えると内定辞退における損害賠償請求についても限定的なものになります。

したがって、内定辞退をするにあたって、会社側から内定辞退者に損害賠償請求する可能性は低いと考えられます。

過去の私が扱った事案では、入社にあたって、社宅を用意していたケースや、制服を作った場合や、社割で人間ドックを受けたケースなどがありました。損害賠償の可能性が心配な場合には、遠慮なく私までご相談ください。力になります。

4.まとめ

内定辞退の際には、エージェント経由の場合には、内定辞退をしたい場合でも、エージェントの方がかなり頻繁に内定辞退の理由を聞いてきたり、エージェントが損害賠償請求の可能性をチラつかせたりするケースが多くあります。

私の方で内定辞退の代行をする場合には、エージェントに対しても、依頼者に連絡をしないように強く言いますので、依頼者に対して連絡してこなくなります。

内定辞退にあたって、エージェントの対応に対して苦慮される場合にも遠慮なく私までご相談ください。力になります。

・関連コラム

第2回『内定辞退代行』

・参考条文

民法第627条第1項

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。