弁護士コラム

第126回

『退職日の指定と退職代行』について

公開日:2025年6月2日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第126回は『退職日の指定と退職代行』についてコラムにします。

目次

1.退職日を退職者が指定できるケースについて

退職代行のご相談にあたっては、退職日を指定できますか?というご質問を受けることが多いです。
退職日の指定とは、かなり幅のある話で、説明にあたっては、いくつかに話を分ける必要があります。

まず、①退職代行したその日を退職日とする即日退職ができるかについては、第35回『即日退職と退職代行』について、をご参照下さい。
今回のコラムの内容としては、②退職者の指定した日を退職日にできるかについて解説しています。例えば、7月1日に退職代行したとして、7月20日を退職日にできますか?というご質問からご回答していきます。
❶公休日以外の日を有給で消化しつつ、7月20日まで有給消化する場合には、7月20日が退職日になることがほとんどです。
❷7月1日から公休日以外の日を有給消化して7月10日まで有給消化した場合には、11日から20日まで有給が足りないため、11日から20日までを欠勤として、20日を退職日に設定することができるかについては、議論があります。
まず、雇用の定めのない正社員、パート、アルバイト、派遣社員の場合には、退職については、民法第627条第1項が適用され、退職の意思を伝えた日から14日を経過した日が退職日になるとされています。したがって、7月1日に退職の意思を会社に伝えた日とするならば、退職日は、14日経過後の7月16日が退職日となります。より具体的に言いますと、11日から16日が欠勤となり、退職日が16日になります。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条第1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

ここまでをまとめますと、❷のケースでは、11日から16日までが欠勤となるため、退職日は、7月16日になります。
したがって、❷のケースでは、7月20日を退職日にするのは、会社との協議次第になります。
❷のケースでは、7月20日が賞与支給日のため、あえて、7月20日までを退職日までに伸ばす交渉をする相談をよく受けます。しかしながら、民法第627条第1項を根拠とした場合には、7月20日の賞与支給日を退職日にするのは、会社が絶対的な拒絶をしてきます。
したがって、❷のケースの退職代行をすることは私はおすすめしていません。
❸次に、退職代行した日が7月1日であった場合で、退職日を7月5日にしてほしいとの質問をよく受けます。
まず、同じような話になりますが、7月1日から7月5日までを有給消化して、6日以降については、有給消化せずに、有給放棄して、7月5日を退職日にするとは、会社との交渉が必要になります。7月5日を退職日とするのは、民法第627条第1項によれば、退職の意思を伝えてから14日経過していないので、7月5日を退職日にするのは即日退職と同じ理論になります。ただ、会社としても、あえて14日経過後まで退職者を在籍させて置く合理的な理由がなければ、7月5日を退職日にすることがほとんどになります。❷のケースのように『退職日をできる限り伸ばす交渉』よりは簡単であると考えられます。
※合理的な理由としては、会社運営上で、資格者が必要なケースでは、会社としては、退職日をなるべく伸ばしたいために、7月5日にする理由がなくなります。

2.まとめ

最近では、退職代行したその日を退職日とする即日退職の交渉だけでなく、退職日を最大限伸長させる退職代行の依頼を受けるケースが多くあります。繰り返しになりますが、退職代行して退職日までに、有給消化して、全有給消化日が退職日になるように交渉するケースはあまり争いになりませんが、欠勤が発生するケースでは、民法第627条第1項が関係してきます。
民法第627条第1項が有利になる場合や不利になる場合もあります。
退職代行を依頼するにあたっては、退職日についてはよく検討して依頼することをおすすめします。お悩みでしたら、遠慮なく私までご相談ください。力になります。

参考条文

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条第1項

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。