弁護士コラム

第128回

『退職代行会社が個人情報を売り渡す時代
【バックグランドチェック、レファレンスチェック】』について

公開日:2025年6月10日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第128回は『退職代行会社が個人情報を売り渡す時代【バックグランドチェック、レファレンスチェック】』についてコラムにします。

目次

1.退職代行のバックグランドチェックやレファレンスチェックについて

退職代行を利用される方は、バックグランドチェックやレファレンスチェックというものをご存じでしょうか?
バックグラウンドチェックやレファレンスチェックとは、退職代行を使った退職者のデータベースを作って検索をかけられるようにして、企業が採用する際に、退職代行を使ったかどうかのデータベースにアクセスできるようにして、採用時の企業が過去、退職代行を利用したかどうかについて、データベース状でチェックすることを言います。そのデータベースに意味付けをすることで、ビックデータにし、退職代行会社が売り渡すことが主目的になります。
ちなみに、退職代行を使ったか否か等を含めてその個人情報がデータベース化された場合には、その個人情報は、本人が削除請求し、削除される以外は、未来永劫データベースに残ります(なお、後述の通り、退職代行を依頼するにあたって、削除請求についても放棄させられている可能性も否定できません)。
今や、退職代行はあたり前になりつつあります。あるデータによると、4人に1人の割合で、『退職代行』を使っている世の中になりつつあります。私は、決して、退職代行が悪いということを言っているのではなく、企業側としても、退職代行を使った人材かどうかをチェックしたいと考えている訳です。企業の採用にあたっては、採用コストがかなりの高額になります。また、採用してから、教育し、企業の戦力になるまでにかなりの教育にコストをかけています。その採用から教育までのコストをかけるべきであるかをチェックするために、採用時に、退職代行を使ったかどうかを事前に見ることができれば企業側としても、退職代行のデータベースを入手するコストは大したものではないと考えます。
要するに、採用した後、退職代行をされる可能性を減らすためには、退職代行を使った方の入社を減らすことが1番効果があるという訳です。

ここまでは読んでいて、『いやいや退職代行を使ったかどうかは個人情報でしょ?個人情報を売り渡すことはできないでしょ?』と思うかもしれません。
その通りで、退職代行を使ったかどうかは、個人情報です。
その上で、個人情報保護法第18条第1項によれば、同意を得た場合に、データベース化し、第三者がそのデータベースを利用することができます。
より具体的に言いますと、一言、『退職代行時に規約や約款を含めて全ての条項を読んで退職代行を退職代行会社に依頼している人はいないと言うことです。』
全てに目を通していないならば、退職代行を使ったかどうかの個人情報をデータベース化して、企業に渡す可能性があるということになります。

退職代行会社が退職代行を使った個人情報のデータベースを企業に渡すことが絶対ないとは言い切れません。

その際、退職代行を依頼するにあたっては、弁護士に依頼するのが確実で安全です。
弁護士には守秘義務が課せられており、退職代行した際の個人情報をデータベース化して、企業に渡すことはありません。

2.まとめ

今回は、退職代行会社が企業に退職代行した個人情報データベースを売り渡す時代が来ることに対して警鐘を鳴らすために、あえてコラムにしました。
退職代行会社だけでなく、労働組合系の退職代行会社が行った場合でも、今回のコラムが当てはまる可能性はあります。
今一度、退職代行会社に退職代行を依頼して本当に大丈夫であるかどうかを十分にチェックするべきです。
あなたのその退職代行は本当に大丈夫でしょうか?

参考条文

個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)

(利用目的の特定)
第17条
第1項 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
第2項 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

(利用目的による制限)
第18条第1項
個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。

弁護士法第23条
第1項
(秘密保持の権利及び義務)
弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。