弁護士コラム

第134回

『退職日を決めた後の退職代行の注意点』について

公開日:2025年7月2日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第134回は『退職日を決めた後の退職代行の注意点』についてコラムにします。

目次

1.退職日を決めた後の退職代行について

よくあるご質問の一つに、退職日をすでに決めている場合に、退職代行で退職日を早める交渉ができますか?というご質問があります。

一つの事案を紹介します。

まず、期間の定めのない正社員であったとします。そこで、事業主と相談をして、8月末日を退職日にしました。その際、退職届をその場で書くように言われたので、退職届を事業主に提出しました。今日現在は、7月1日です。明日から出勤したくないので、欠勤しつつ、民法第627条第1項により14日経過後を退職日にしたいので、退職日を早めることができますか?

今回についても弁護士の清水隆久が解説します。

まず、民法第627条第1項の14日経過後に退職になるという条文は、退職日を決めていた場合には、適用されません。

先程、紹介したケースでは、すでに、8月31日で、退職の合意をしているため、その退職の合意をしていた場合には、その退職日の合意を撤回するためには、事業主(会社)の撤回の合意が必要となります。

したがって、すでに、退職日を決めていた場合に、退職代行するにあたり、会社に対して、退職日の合意の撤回をするように交渉する必要があります。

その際、会社側が拒否することができるため、早めに退職日をもっていくことができない場合があります。また、8月31日まで、欠勤をし続けた場合には、解雇される可能性がありますので、欠勤については、正当な理由が必要となります。

もちろん、8月31日まで有給がある場合には、有給消化すれば、解雇される可能性はほとんどなくなりますが、有給消化できない場合には、体調不良などの理由がない限り、解雇される可能性があります。

したがって、体調不良や有給がない場合には、8月31日まで、欠勤することで、解雇される可能性があり、おすすめできません。

ここまでをまとめますと、退職日を決めた後の退職代行については、そもそもおすすめできないので、退職代行を使う予定であれば、ご自身で退職日を決めないことを強くおすすめします。

2.退職届の受領拒否した場合

一つ目の事案と異なり、8月31日付けの退職届を出した場合でも、会社が受領を拒否した場合には、そもそも退職日が決まっていないため、このようなケースでは、民法第627条第1項が適用されるため、退職代行で、退職日をスムーズに決めることができます。

3.まとめ

退職日を決めた場合に対する対策としては、おそらく退職日まで出勤することが精神的に難しいケースが多いように感じます。

したがって、精神的に限界であれば、診断書を取得して、退職日までお休みすることをお勧めします。職場との連絡をとりたくないなどのご要望がありましたら、休職代行などのご検討はいかがでしょうか?

また、体調不良などのケースでは、その理由をもって、退職日を早めることができる可能性も高くなってきます。

すなわち、民法第628条の期間の定めのある雇用契約と同じにように考えて、体調不良などの『やむを得ない事由(理由)』を主張することになります。


『期間の定めのある雇用契約の退職』については、コラム第129回をご参照ください。

お悩みでしたら、遠慮なく私までご相談ください。力になります。

・参考コラム

第88回『休職代行のメリットと理由』について

第129回『期間の定めのある雇用契約と退職代行』について

・参考条文

民法第627条第1項

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

民法第628条

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。