弁護士コラム

第135回

『退職代行を使うといつが退職日になる?』について

公開日:2025年7月7日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第135回は『退職代行を使うといつが退職日になる?』についてコラムにします。

今回、退職代行を使った場合に改めて退職日がいつになるかについて、弁護士の清水隆久が解説していきます。

目次

1.雇用の定めのない雇用契約(正社員、パート、アルバイト、派遣社員)について

まず、正社員、パート、アルバイト、派遣社員などの期間の定めのない雇用契約の場合について解説していきます。

正社員、パート、アルバイト、派遣社員の方が退職したいと思った場合には、民法627条第1項が根拠になります。627条第1項によれば、退職の申し出をしてから14日経過後になる旨が定められています。

原則的な話をしますと、6ヶ月経過後は、法律上、有給が発生しますので、14日間を有給消化をあてつつ、有給消化できない日数は欠勤で処理します。

しかしながら、退職代行時には退職通知を弁護士が行った場合には、一度も出勤しないケースがほとんどですので、会社としても、わざわざ14日経過後まで在籍させる必要はないと考えて、有給消化をしたその日を退職日とする退職合意をするケースが例外的なパターン以外ほとんどです。

例として以下の通りとなります。7月1日を退職通知日(退職代行)にした場合には、民法140条により退職代行したその日は、初日不算入となり、14日を経過させる必要があるので、7月16日が退職日になります。

次に、有給がないケースでは全て欠勤とするものの、7月16日が退職日になるのは変わりません。次の事案として、有給が30日あるケースを紹介します。

有給については、営業日を有給消化にあてていきますので、公休日については、有給消化することができません。例えば、土日が公休日の場合には、7月1日を退職代行した場合には、8月8日まで有給消化できるため、8月8日が退職日になります。

2.雇用の定めのある雇用契約(契約社員)について

一方で、契約社員については、期間の定めがあるため、民法第628条が適用され、退職通知をした日が退職日になります。ただし、期間の定めがある雇用契約の場合で、退職するには、『やむを得ない理由』が必要となります。

その際、期間の定めのある雇用契約の場合には、有給があれば、有給消化し、有給消化した日をもって退職になることがほとんどです。期間の定めのある雇用契約の退職代行については、コラム第129回『期間の定めのある雇用契約と退職代行』について、をご参照ください。

3.退職関係書類について

退職関係書類については、一般的に以下の通りとなります。

退職関係書類について

退職代行時に、会社側に対して、請求する退職関係書類は、以下の通りとなります。
⑴雇用保険被保険者証
⑵離職票
⑶社会保険喪失証明書
⑷源泉徴収票
⑸退職証明書

※給与明細書については応相談になります。

⑴雇用保険被保険者証については、入社時に受け取ったいる場合もありますので、再発行手続きになる場合もあります。転職先で急ぐ場合には、お近くのハローワークで再発行の手続きがとれますので、お急ぎの方は、ご自身での取得についてもご検討ください。

⑵離職票については、退職日から10日以内に手続きすることが雇用保険法で定められていますので、退職日から10日以内に離職票の発行手続きをするように会社に請求します。

なお、離職証明書の請求を受任通知書でお願いしたいとご相談を受けるケースはありますが、離職証明書は、会社がハローワークに提出する書類になりますのなりますので、離職証明書を提出後、離職票が発行されます。

⑶社会保険喪失証明書とは、健康保険に加入されていた方が国民健康保険に加入するために必要な手続き書類です。しかしながら、社会保険喪失証明書については、法律上発行することが義務付けられていませんので、法的に強制することができない書類ですが、退職代行時には、受任通知書で請求します。

ちなみに、社会保険喪失証明書が会社から発行されない場合には、退職日以降、お近くの年金事務所で社会保険喪失証明書をご自身で発行してもらうケースもありますので、注意が必要です。

⑷源泉徴収票については、所得税法により退職日から1ヶ月以内に発行することが法律上義務付けられていますので、受任通知書で請求します。

⑸退職証明書とは、労働基準法第22条で定められている書類となります。会社には発行義務が労基法上、定められていますので、受任通知書によって、請求します。

仮に、⑴から⑸の書類が退職日から所定の期日までに届かない場合には、催促をしますので、弊所までその都度、ご連絡をください。

※給与明細書は、所得税法で発行義務が定められています。しかしながら、発行していない会社はあるため、事前に応相談となります。私の方から会社に対して請求することもできます。

4.まとめ

退職代行については最近ではかなり認知度が出てきましたが、はじめて依頼する方からのご質問をいただくことも多いため、退職代行の概要をコラムにしました。現在のところ弁護士の行う退職代行の流れは今回のコラムが役に立つはずです。

しかしながら、退職代行について、疑問点がありましたら、遠慮なく私までご質問ください。力になります。

また、今回、有給消化ができることを前提として、コラムを書きましたが、実際には、有給消化は交渉になるケースもあります。

有給消化については、コラム第66回をご参照頂けると幸いでございます。

その他の諸問題については、以下の各コラムをご参照ください。

次に、ご質問の多い項目から順不同コラムを引用しました。

・社宅の退去については、第58回のコラム
・即日退職、実質的即日退職については、第35回のコラム
・損害賠償については、第12回第115回のコラム
・30日前、60日前、2ヶ月前、3ヶ月前、6ヶ月前申告については、第36回のコラム
・前借りについては、第34回のコラム
・借入金については、第32回のコラム
・車両事故については、第25回のコラム
・資格取得費用については、第27回第28回のコラム
・退職証明書を会社が発行しないケースでは、第102回のコラム をご参照ください。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。