弁護士コラム

第136回

『最近の退職代行サービスについての考察
(弁護士法第72条違反、労働組合法)』について

公開日:2025年7月7日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第136回は『最近の退職代行サービスについての考察(弁護士法第72条違反、労働組合法)』についてコラムにします。

目次

1.退職代行会社が行う退職代行サービスについて

退職代行を使って後悔する理由の主な原因の一つは、依頼者が退職代行というものに期待をしていることにあります。

そして、依頼者は、退職代行会社が退職代行サービスをするにあたって、依頼者自身の要求について交渉をして、要求を叶えてくれるはずだという(依頼者の)期待と弁護士法第72条(非弁)の関係が浮き彫りになってきています。

このコラムは弁護士コラムでありますので、違った視点も加えられたらと思っています。今回も弁護士の清水隆久が解説していきます。

退職代行とは、言葉の意味として、退職を伝えるということになります。元々、自分で『辞める』と言えない方に対するサービスとして爆発的に認知されてきました。

しかしながら、最近では、依頼者のニーズは多様化しており、単純に、退職の意思を伝えるだけでなく、例えば、①有給消化をしたい、②給与を全額もらいたい、③自分自身や緊急連絡先に電話や訪問をされたくない、④損害賠償されたくない、⑤退職日を即日退職(退職代行したその日を退職日にすること)にしたいなど様々です。

実は、退職代行会社が行えるのはあくまでも退職の意思を伝えのみで、交渉する権限はありません。したがって、仮に、会社側が退職代行にあたり、上述の①②③④⑤について拒否してきた場合には、退職代行会社は、交渉することができません。

仮に、交渉した場合には、弁護士法第72条違反になります。退職代行会社が、上述の①②③④⑤について交渉している事例は、私の方では、ここ最近、数件程度、把握しています。

最近では、東京弁護士会が退職代行会社の行う退職代行サービスについて異例の注意喚起を発表していますので、実は、目にあまるケースを把握しているのではないかと私は推測しています。

・参照

東京弁護士会

退職代行サービスと弁護士法違反


注意喚起の内容については、一見して、退職代行会社がそんなことする訳はないだろと言う内容ですが、私が把握しているケースでは、注意喚起に記載されてるような事例以外になります。

その点、弁護士であれば、退職代行をする際にも、交渉の内容については一切制限されるものはないため、上述の①②③④⑤についても交渉できます。

2.労働組合系の退職代行会社が行う退職代行サービスについて

次に、労働組合系の退職代行会社であれば、退職代行にあたって、交渉することはできますので、上述の①②③④⑤については、弁護士と同じように交渉が可能です。

ただ、最近の問題点については、東京弁護士会も注意喚起しているように、退職代行の依頼費用について、退職代行会社に退職代行の依頼費用を一括で振込み、その費用の一部を労働組合に流しているケースでは、その行為自体が弁護士法第72条に違反することになります。

さらに、労働組合系の退職代行会社は、退職代行会社の行う退職代行サービスが非弁の可能性があるため、労働組合の名前を使っているに過ぎず、本来の労働組合法第1条の組合員の経済的地位の向上を目的とするのではなく、退職代行サービスを行うために設立された組合がほとんどです。

したがって、ほとんどの労働組合系の退職代行会社が会社と交渉する必要が発生した場合に、労働組合の方で交渉しないで、交渉事項を弁護士に改めて依頼するように勧めているのが現状のようです。

私は、かなりの割合の労働組合系の退職代行サービスは、労働組合を隠れ蓑にして退職代行サービスを行っており、実態は、退職代行会社だと考えています。

また、労働組合系の退職代行サービスについて、1番おかしいのが、組合加入費とは別に退職代行サービスの報酬(費用)を要求していることです。

例えば、某労働組合系の退職代行会社は、初回の入力フォームに対して、返信したことをもって、退職代行サービスの契約が成立したとし、あろうことか退職代行サービスの報酬(費用)をかなり強く請求しています。

期限までに、費用を払わないと法的措置をとるなどと報酬(費用)を請求しているようですが、労働組合の報酬(費用)は、寄付に準ずる扱いで、法的に請求する現状がおかしいと考えます。

3.まとめ

退職代行会社が非弁行為にあたるような交渉を行っている場合には、私までご連絡を頂けると幸いでございます。

さらに、退職代行会社に退職代行サービスを依頼したけれども、結果的に、退職が失敗したケースがありましたら、遠慮なく私までご相談ください。

労働組合法
第1条
(目的)

この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。

弁護士法第72条
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。