
弁護士コラム
第137回
『退職金請求と退職代行【相談窓口】』について
公開日:2025年7月9日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。
その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第137回は『退職金請求と退職代行【相談窓口】』についてコラムにします。

目次
1.退職金請求時の注意点
本来的には、退職代行とは『退職の意思を伝える』という意味になります。元々は、退職をするということ自体を自分では言えないために、爆発的に認知されてきました。
しかしながら、最近では、依頼者の要望(ニーズ)は多様化しています。そのニーズの一つとして、退職金を退職代行時に請求する業務になります。退職金の請求をする際には少なからず法的な問題を含んでいるため、弁護士に依頼することをお勧めしています。
それでは、本題に入ります。退職代行時に退職金を貰えますか?というご質問はとても多いです。依頼者のニーズとして、退職金の請求を退職する会社にして欲しいと考えるのは自然です。まず、退職代行時の退職金の請求のポイントを解説します。
①退職金の対象者であるか
②退職金がいくら支給されるか。
③退職金の支給時期はいつか。
上記の①②③の観点から詳述します。
実は、①②③については、会社の就業規則(退職金規定)のチェックを事前にしてください。全て①②③について記載されていない場合には、退職金制度が導入されていない会社のため、退職金自体が支給されません。会社には退職金を支給する義務がありません。
一方で、退職金の規定が会社にないものの他の過去、同僚が退職した際に、退職金が支給されているケースがあったとする声も聞きます。
しかしながら、退職金が慣行(慣習)的に支払いされている場合には、退職する自分自身にも同じような額を会社に請求するためには、退職者自身で退職金支給の慣行を立証して行く必要があり、支給のハードルがあがります。
したがって、退職時に退職金を請求するためには、事前に、退職金規定をチェックすることを強くお勧めします。
次に、仮に、退職する会社で3年以上の方が対象になっていた場合(①)に、退職金がいくら支給されるか(②)についても、退職金規定によります。したがって、繰り返しになりますが、事前に就業規則や退職金規定を事前にチェックしておいてください。
さらに、退職金の支給時期(③)についても、同じように就業規則や退職金規定を事前にチェックをしてください。一般的には、退職日から1ヶ月から3ヶ月以内の支給時期が定められている規定が多いです。
仮に、時期時期が定められていない場合には、労働基準法第23条によるため、退職時(かつ、請求時)から7日以内に支給するようになります。
ここまでをまとめますと、退職金の支給は、就業規則や退職金規定によるため、退職の意思を伝える退職代行時にまでに、規定を事前にチェックをしておくようにしてください。
もし、時間的な余裕がなく、規定をチェックする時間がない場合には、私が退職代行を行うにあたって、会社に規定の開示を請求することもあります。お困りでしたら、私までご相談ください。力になります。
2.就業規則上で退職金支給の条件がある場合
稀に、就業規則の定めに、退職は退職の申し出から3ヶ月前に通知しない場合には、原則として、退職金の支給をしないという条項を見かけます。
仮に、3ヶ月前の通知をしない場合に、退職金を受け取ることができますか?というご質問を受けます。
あくまでも、最高裁判所の判断がある訳ではないため、私見になりますが、まず、裁判例で、3ヶ月前の退職通知の規定は、民法第627条第1項に反して、違法一部無効になりますので、その一部無効の規定に基づいて退職金を不支給にすること自体が違法になると考えます。
退職金の法的性質は、「賃金の後払い的性格」と「功労報償的性格」を併せ持つとされていますので、3ヶ月前の退職通知をするべきであるという会社側の要望と退職金の法的性質は矛盾するものと考えられます。
したがって、3ヶ月前の退職通知をしない場合でも、退職金を不支給とするのはできないと考えます。
3ヶ月前の退職通知が民法第627条第1項に違反するかどうかについては、コラム第36回『30日前、60日前、2ヶ月前、3ヶ月前、6ヶ月前申告と退職代行』について、をご参照ください。
3.退職金共済に加入している場合(まとめ)
退職金については、中小企業企業退職金共済に加入しているケースがあります。その際、退職者自身で、解約請求を中小企業企業基盤整備機構に請求する必要があります。
私が退職代行する場合には、会社が中小企業退職金共済の請求手続きをするように会社に対して催促をして、基盤整備機構から解約書類が届くように手配をすることも多くあります。
また、建設業退職金共済の場合でも、解約書類の請求を会社を通じて行うことが多くあります。会社が中退共や建退共に加入している場合で、お悩みでしたら、退職代行の相談と合わせてご相談ください。
・参考条文
(金品の返還)
労基法
第23条
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
② 前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。
・参考コラム
第71回『労働基準監督署への申告及び告訴』について
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者

弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。