
弁護士コラム
第140回
『退職代行時に懲戒解雇を防ぐ方法』について
公開日:2025年7月22日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。
その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第140回は『退職代行時に懲戒解雇を防ぐ方法』についてコラムにします。
退職代行時に、会社が懲戒解雇してくるケースがあります。
例えば、業務中に業務上横領したケースであれば、懲戒解雇されても『やむを得ない』のかもしれません。
しかしながら、今回のコラムでは、業務中の懲戒解雇ではなく、退職にあたっての懲戒解雇されるケースを紹介しつつ、懲戒解雇を防ぐための方法を解説していきます。
今回のコラムの解説も弁護士の清水隆久が担当します。過去から現在までに沢山の退職代行を担当してきたからこそ解説できる知識を発信していきたいと考えています。

目次
1.退職代行時に懲戒解雇を防ぐ方法について
退職代行時にあたって、懲戒解雇されるケースは、『欠勤が2週間以上』になるケースが考えられます。
※2週間以上とは、連続した欠勤や連続した欠勤と評価されるケースを前提とします。
2週間以上無断欠勤が続くことが、裁判所で正当と判断されるための目安(東京地方裁判所平成12年10月27日判決など)となっています。
この2週間以上の無断欠勤については、所定労働日に無断欠勤をするということから、実は、公休日も合わせると懲戒解雇日になるには、退職代行した日から17日か18日が必要となります。
その一方で、退職については、民法第627条第1項により、2週間経過後に退職となっており、民法第627条第1項の2週間には、公休日を含まれてるので、暦日での計算になります。
文字通り、公休日を含めた2週間ですので、通常の退職代行時には、無断欠勤が2週間以上続くことがありません。
例を挙げますと、例えば、7月1日に退職代行をしたとします。その際、2週間経過後は、民法第140条により初日不算入のため、❶7月16日が退職日になります。次に、懲戒解雇の場合の退職日は、仮に、7月5日、6日、12日、13日が公休日の場合には、2週間の欠勤については、❷7月18日が懲戒解雇日になります。
❶❷を比べた場合には、自己都合退職日の方が早く到達することがわかると思います。
※無断欠勤の定義自体は、正当な理由のない休みということであれば、有給消化した場合や医師が認めた体調不良の場合には、正当な理由がある休みになるため、有給消化や医師が認めないような体調不良を指します。
次に気をつけるべき事例を紹介します。
よくあるご相談内容のひとつとして、『会社側と退職日を2ヶ月後にした場合に、退職を早める交渉や退職代行の依頼ができますか?』というものがあります。
例えば、相談者が会社と退職について、9月末日にするという合意をします。相談された日が7月15日で、7月16日から欠勤を開始して、退職代行できるかという相談を受けます。
まず、依頼者としては、退職については、民法第627条第1項により、退職の申し出をしてから14日経過後の7月末日が退職日になると考えている方が多いです。
しかしながら、すでに、退職日については、9月末日で退職合意をしているため、7月末日を退職日にするためには、改めて会社との合意が必要となります。簡単にまとめると、今回の事例では、民法第627条第1項が適用されません。
とすれば、7月16日から9月末日まで欠勤になる訳です。そうすると、無断欠勤が2週間以上となると懲戒解雇されます。
すなわち、9月末日まで、有給消化や医師が認めた体調不良の場合以外では、例外なく懲戒解雇される事案となります。
最後にあまりないケースですが、退職代行時に懲戒解雇されるケースがあります。例えば、期間の定めのある契約社員で場合で、体調不良等のやむを得ない理由がないまま、欠勤したケースも考えられます。
やむを得ない理由がない場合には、無断欠勤期間が続くため、無断欠勤期間が2週間以上になった場合には、懲戒解雇の対象となります。
懲戒解雇になった場合には、履歴書に記載する必要があります。また、履歴書に懲戒解雇であった旨を記載しなかったケースで、次の会社にその事実を秘して就職した場合で、後になってバレた場合には、新しい会社でもさらに解雇されるリスクが出てきます。したがって、懲戒解雇されると厄介な場合があります。
今回のコラムを前提に退職についてお困りでしたら、遠慮なく私までご相談ください。きっと楽になります。
2.まとめ
退職代行時の14日経過後の初日の起算日を確定させるためには、内容証明郵便を使うと有効なケースもあります。
内容証明郵便を使って退職代行を行うのは、弁護士が行うことが一般的でありますので、退職代行については、弁護士に依頼することをおすすめします。
お困りでしたら、遠慮なく私までご相談頂けると幸いでございます。
・参考コラム
第64回『弁護士による退職代行と内容証明郵便』について
・参考条文
民法
第140条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。
ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
第627条第1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
労働契約法(懲戒)
第15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者

弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。