
弁護士コラム
第141回
『退職代行【退職】を無視する会社に対する対応【相談窓口】』について
公開日:2025年7月22日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。
その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第141回は『退職代行【退職】を無視する会社に対する対応【相談窓口】』についてコラムにします。
退職代行というものが世の中で流行り始めて7年ぐらいはたったのではないでしょうか。
今のように退職を伝えることが大変だからこそ退職代行のニーズが世の中にあります。
では、退職代行を依頼して、退職代行したけれども、会社側がその退職代行を無視するとどうなるかについて今回も弁護士の清水隆久が解説していきます。

目次
1.退職したかどうかがわからなくなる場合
『❶退職したかどうかがわからなくなる』について
退職したかどうかがわからなくなるというのは、次の会社に進めなくなる可能性があるということです。
ここで、法的な話をします。退職は、民法第627条1項には、退職の申し出をしてから14日経過後に退職となるとされていますので、そもそも会社の許可や承認は不要になります。
退職の申し出が会社に届くことが必要で、届くことが1番重要な事実になります。届いた否かについては、内容証明郵便を使うことが重要になってきます。
内容証明郵便については、コラム第64回『弁護士による退職代行と内容証明郵便』について、で解説しています。
お時間ありましたら、ご参照してみてください。理解が進むかと思います。
内容証明郵便にて、退職の意思が正確に届いたものとすることで、その届いた日から14日経過後を退職日にする方法になります。
内容証明郵便にて、退職代行を行うのは、今のところ、退職代行会社や労働組合系の退職代行会社はやっておりませんので、内容証明郵便付き退職代行をご希望でしたら、弁護士に依頼することを強くおすすめします。
お困りでしたら、遠慮なく私までご相談ください。力になります。
さらに、退職について会社側が無視を決め込んでいる場合には、退職について裁判提起することもおすすめしています。最近では、退職代行の依頼者側が会社を被告として、退職について裁判提起するケースが増えています。
無視をするという会社は悪質極まりないため、裁判手続きをとる方法を私はおすすめしています。裁判手続きは、一般的に時間がかかりますが、会社に対して強いプレッシャーをかけることができます。
裁判手続きを取ることができるのは弁護士だけですので、退職について裁判手続きをご希望の場合には、弁護士に相談をすることをお勧めします。
退職代行会社や労働組合が退職代行にあたって、裁判手続きをとることはできないので、今後、退職代行については、弁護士に依頼するということが極めて重要になってきます。お困りでしたら、私までご相談ください。
2.退職関係書類の発行がされなくなる場合
『❷退職関係書類の発行がされなくなる』について
一般的に雇用される側としては、雇用保険、社会保険に加入しています。その際、雇用保険が喪失されたか否か、社会保険が喪失されたか否かについては、最近ではマイナポータルで確認ができるようになっています。
さらに、従来の方法ですが、雇用保険が喪失されているかについては、ハローワークに電話、または、直接、窓口に訪問して確認する方法があります。
社会保険が喪失されているかについては、お近くの年金事務所やけんぽ協会に電話、または、直接、窓口に訪問して確認する方法があります。
次に、雇用保険喪失、社会保険喪失手続きがされていない場合には、会社に対して、指導、催促してもらうように各窓口に『申告』手続きをする方法が有効です。その際、弁護士の受任通知書や退職通知書も一緒にもっていくようにすれば手続きがスムーズだと思います。
さらに、いつ退職されたかなどの証明として、退職証明書の発行を要求する場合もあります。退職証明書は、労基法第22条に基づく請求ができ、同条によれば、会社は請求された場合には、『遅滞なく』交付する義務があるため、発行されない場合には、労働基準監督署に申告手続きをすることをおすすめします。なお、退職証明書の請求は、時効で退職してから2年以内になっています(労基法第115条)。
❷についても、❶同様、裁判手続きを検討する場合もありますので、お困りでしたら、私までご相談ください。
3.まとめ
源泉徴収票が発行されないケースでは、税務署に源泉徴収票の不発行届出書を提出の上、税務署から会社に対して指導するようにお願いすることもできます。
源泉徴収票は、退職日から1ヶ月後に発行するように定められている(所得税法第226条第1項)ので、退職日から1ヶ月経ったあとも、発行されない場合に、不発行の届出書を提出するようにしてください。お困りでしたら、私までご相談ください。
・参考条文
労働基準法
第22条
(退職時等の証明)
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
第115条
(時効)
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
所得税法第226条 抜粋
(源泉徴収票の交付義務)
(1)居住者に対し国内において第28条第1項(給与所得)に規定する給与等(第184条(源泉徴収を要しない給与等の支払者)に規定によりその所得税を徴収して納付することを要しないものとされる給与等を除く。以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した給与等について、その給与等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票2通を作成し、その年の翌年1月31日まで(年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後1月以内)に、1通を税務署長に提出し、他の1通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない。ただし、財務省令で定めるところにより当該税務署長の承認を受けた場合は、この限りでない。
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者

弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。