弁護士コラム

第144回

『パワハラ防止法と退職代行【相談窓口】』について

公開日:2025年7月25日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第144回は『パワハラ防止法と退職代行【相談窓口】』についてコラムにします。

目次

1.パワハラ防止法について

退職代行とのセットでパワハラを受けたので、その被害を会社に訴えて欲しいというご相談を受けます。

しかしながら、パワハラを受けたという被害を立証するのは退職者側になりますので、そのパワハラの主張をするのは難しい場面も多くあります。そんな中、パワハラ防止法が定められています。

パワハラ防止法とは、事業主にパワハラ防止の措置を義務付ける法律であり、正式名称は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律です。

法改正により義務付けられたパワハラ防止措置をとらずに社内でパワハラ被害が発生した場合や、パワハラ被害があった後に法律上義務付けられた事後措置をとっていない場合、企業の責任がこれまで以上に厳しく問われています。

このパワハラ防止法ですが、同条によれば、パワハラがあったことを会社に申告した場合には、その申告内容について会社に防止措置義務や調査義務を課した上で、その義務違反があった際には、会社に対して損害賠償責任を課すようにしています(民法第415条)。

最近では、退職代行時に、退職者がパワハラの申告をした後に、調査義務違反に対する損害賠償請求をするケースも増えています。

もっとも、パワハラ防止法に反するような対応を会社がした場合でも、ハローワーク上の退職区分は、会社都合退職ではなく、自己都合退職になりますので注意が必要です。

2.まとめ

パワハラ防止法に反するような義務違反があった後、被害を受けた方が休職に入って休みに入るケースでは、休職期間に相当する賃金や慰謝料が損害賠償請求の対象となります。

さらに、パワハラがあった旨の申告は、書面で出した、LINEやメールで送ったり、パワハラの申告をした際の会話の内容を録音でするなど証拠化する必要があります。

パワハラの申告の相手方は、少なくとも、人事担当者にする必要があり、人事担当者以外の上司では足りません。中小企業であれば、会社の社長が該当するケースがほとんどだと思います。

また、パワハラ防止法の被害申告の際には、被害を受けた方に対する行為がパワハラにあたるか否かではなく、パワハラがあった旨の申告をして、会社がそのパワハラに対する調査をして、結果的にパワハラがなかったと会社が申告者に報告する義務まであります。

要するに、パワハラ防止法は、会社がパワハラがあったか否かについて調査せずに『放置すること』や『なかったこと』にすることができないような法的枠組みになっています。退職代行とセットでパワハラ防止法に関してお困りでしたら、担当弁護士、または、私までご相談ください。

※現在、パワハラ防止法に関する相談は多数のため、対応は、LINE登録を前提したご相談のみに限らせていただきます。
あらかじめご了承ください。

「労働施策総合推進法 第30条の2」の条文
(雇用管理上の措置等)

第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

3 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。

指針については、こちらを参照

民法第415条

第1項 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。