弁護士コラム

第163回

『マネジメント契約の解除で退職代行を利用する方法』について

公開日:2025年9月17日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第163回は『マネジメント契約の解除で退職代行を利用する方法』についてコラムにします。

目次

1.マネジメント契約の解除代行について

マネジメント契約とは、主に芸能人やスポーツ選手が芸能事務所やプロダクションと締結する契約で、事務所がタレント等の活動全般を包括的に管理・サポートし、タレント等は活動に専念できる形態が一般的です。

最近では、タレントに限らず、youtuberやtiktokのライバーの方も所属事務所とマネジメント契約を結ぶケースが増えています。

マネジメント契約は、タレントの方が芸能事務所に対して活動全般を包括的に管理・サポートを委任事項として、委任することを法的な性質としています。委任契約は、委任を解除したいというそのタイミングで解除することができます(民法第651条)。

しかしながら、最近では、マネジメント契約を解除するにあたり退職代行を依頼するケースが増えています。

まずマネジメント契約を解除すること自体を拒否するケースについて解説します。マネジメント契約を解除するにあたっては、マネジメント契約に関する契約書類があるかどうかをチェックする必要があります。契約書の中には3年間契約を解除できない条項が入っているケースもあります。

また、解除時に、高額な違約金を請求することができる条項が入っているケースもあります。契約書上で、3年の契約期間が入っていた場合には、民法651条の特約となり、3年間は解除することができなくなります。

マネジメント契約にあたっては、所属タレントが無名の頃から、事務所経費を使ってレッスンをさせたり、プロモーションを積極的に行ったりして、多額のお金を投資します。マネジメント契約書で3年間の契約解除の縛りがあった場合でも一般的な契約期間であるといえます。

したがって、3年間契約解除できないことも致し方ないと考えます。

第1のチェックポイントは、契約書の条項を解除の前にチェックしましょう。そもそも契約を結んでいない場合には、民法第651条により即日解除ができます。

2.高額な違約金について

第2のポイントとして、高額な違約金について検討します。繰り返しますが、マネジメント契約にあたっては、所属タレントが無名の頃から、事務所経費を使ってレッスンをさせたり、プロモーションを積極的に行ったりして、多額のお金を投資します。

したがって、早期解除した場合に、一定の違約金が生することも考えられます。

違約金の定めの内容が法外な金額を設定していたりして、芸能人を隷従させるのに近いものであるとすれば、事実上、相当な範囲を超える違約金額の部分は公序良俗(民法第90条)に反し無効であるとされる場合もあるかと考えられます。

3.競業避止条項について

第3のポイントとして、解除後に、一定期間、他とマネジメント契約を結ぶことを禁止する競業避止条項について契約を結んだ場合について検討します。まず契約を結んでない場合には、競業避止条項については効力が発生しません。

繰り返しますが、マネジメント契約にあたっては、所属タレントが無名の頃から、事務所経費を使ってレッスンをさせたり、プロモーションを積極的に行ったりして、多額のお金を投資します。

したがって、競業避止条項を一定期間結んだとしても有効な場合もあります。東京地方裁判所平成18年12月25日の判決では、「芸能人の芸能活動について当該契約解消後2年間もの長期にわたって禁止することは、実質的に芸能活動の途を閉ざすに等しく、憲法22条の趣旨に照らし、契約としての拘束力を有しない」とされています。

→2年は長すぎるとして、最近では、解除後、6ヶ月間は、他とマネジメント契約を制限する規定が多くなっているように感じます。

4.まとめ

マネジメント契約の解除を代行(退職代行)することもあります。しかしながら、上記の通り、法的な検討事項が沢山あります。適切な方法で解除をしないと思わぬトラブルに会うケースもあり、または、事前に弁護士に相談することで、どのようなトラブルがあるかについて、知ることもできます。

最近では、マネジメント契約を解除したにも関わらず、tiktok上での契約を解除しないために長期間に渡ってクリエイターの収益の一部がマネジメント会社に配当されるなどの相談も受けています。

マネジメント契約の解除代行(退職代行)についてお困りでしたら、遠慮なく私までご相談ください。力になります。

※補足
マネジメント契約については、事業のために締結しているため、消費者保護法が適用されないケースがほとんどです。

・参考条文

民法
第651条第1項
(委任の解除)

委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。

第658条 (準委任)

この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

・参考コラム

第19回『業務委託の退職代行』について

第22回『休職代行のメリットと理由』について

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。