弁護士コラム

第162回

『1日から3日出勤して試用期間中に退職代行を利用する方法(社会保険料の取り扱い)』について

公開日:2025年9月17日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第162回は『1日から3日出勤して試用期間中に退職代行を利用する方法(社会保険料の取り扱い)』についてコラムにします。

目次

1.試用期間中の退職代行サービスについて

1日、2日、3日と会社に出勤したものの職場の雰囲気が合わない場合やこのまま続けていても先がないと感じた場合には、弁護士による退職代行サービスを利用するのも一つの方法だと思います。

⑴民間企業の方へ
試用期間でも退職代行サービスが利用できるかについて心配をされる依頼者がいらっしゃいますが、試用期間中であっても、弁護士による退職代行サービスは利用できます。退職代行サービスは、有給が発生していない場合でも利用ができます。具体的には、通常であれば、退職代行したその日、または、次の日から出勤しません。退職代行の際、有給がなければ欠勤にします。欠勤して、退職代行したその日を退職日とする即日退職になることや、民法627条第1項による退職申し出から14日経過を全て欠勤にして退職することができます。より具体的に言えば退職代行サービスを利用した段階で出勤せずに退職まで手続きをします。

※即日退職となるケースもあります。即日退職については、コラム第35回『即日退職と退職代行』について、をご参照ください。

⑵公務員の方へ
次に試用期間の退職代行サービスは、民間企業にお勤めの方以外の公務員の方でも利用ができます。例えば、4月1日入職された条件付き公務員の方であっても、退職代行サービスによって、出勤せずに退職しています。例えば会計年度任用職員(公務員)の方でも退職代行サービスを利用できます。

2.社会保険料の扱いについて

今回のテーマの1日、2日、3日で退職の意思を固めた場合で、雇用保険、社会保険未加入であった場合には、そのまま加入のストップの依頼をすることがあります。

社会保険、雇用保険の加入は、入社と同時にすべきと法律上は定められているため、そのストップの依頼自体は、法的には交渉事項にすることは難しい場合もあります。

しかしながら、手続きがまだされていないケースで退職してしまうのも会社の負担になっているのも事実です。

例えば、健康保険に加入した月に退職してしまった場合でも、法律上は、健康保険料と国民健康保険料の2カ所に保険料(税)を支払う必要があります。2カ所に支払うのは退職者にとってもかなりの負担です。

なお、厚生年金保険については、同月取得喪失の場合には、あとで、国民年金に加入した場合には、厚生年金保険料の還付があります。

・参考条文

【厚生年金保険法】

第19条
被保険者期間を計算する場合には、月によるものとし、被保険者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までをこれに算入する。

2 被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を一箇月として被保険者期間に算入する。ただし、その月に更に被保険者又は国民年金の被保険者(国民年金法第七条第一項第二号に規定する第二号被保険者を除く。)の資格を取得したときは、この限りでない。

※【同月得喪】
入社した月に退職をした場合
厚生年金保険の資格を取得した月にその資格を喪失した場合は、厚生年金保険料の納付が必要になります。被保険者負担分の厚生年金保険料は退職時に給与から控除され、会社が会社負担分と被保険者負担分を翌月末までに納付することとなります。

ただし、厚生年金保険の資格を取得した月にその資格を喪失し、さらにその月に厚生年金保険または国民年金の資格を取得した場合は、先に喪失した厚生年金保険料の納付は不要となります。

この場合、年金事務所から対象の会社あてに厚生年金保険料の還付についてのお知らせを送付します。厚生年金保険料の還付後、被保険者負担分は会社から被保険者であった方へ還付することになります。

3.まとめ

今回の試用期間中の退職代行サービスについては、雇用期間の定めがない正社員や派遣社員の方を前提として解説をしましたが、契約社員の方であっても試用期間中の退職代行サービスを利用することができます。

しかしながら、契約社員の方の場合には、退職手続きにあたっては、やむを得ない事由が必要なケースもあります。

やむを得ない事由については、いくつか争いがあるため、コラム第129回『期間の定めのある雇用契約と退職代行』について、をご参照ください。

試用期間中の契約社員、正社員、派遣社員、パート、アルバイトの方がいらっしゃいましたら、遠慮なく私までご相談ください。力になります。

・参考コラム

第129回『期間の定めのある雇用契約と退職代行』について

・参考条文

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条第1項

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

民法第628条

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。