
弁護士コラム
第167回
『派遣を即日で辞める(退職代行のリスクと無料相談窓口)』について
公開日:2025年9月24日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。
その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第167回は『派遣を即日で辞める(退職代行のリスクと無料相談窓口)』についてコラムにします。
某退職代行会社が宣伝していましたが、退職代行を行う1番多い職種は、派遣業務ということです。
過去、派遣業務というのは長く業務として法律上禁止されていたこともあります。
派遣業務を無くして今の日本は成り立たないと言っても過言ではないと言えます。
しなしながら、派遣スタッフとして働いている方にとって見れば、その会社の職場環境に違和感を覚える場合があるということをよく聞きます。
また、クレーム対応などを派遣スタッフが行う場合も現実的にあります。派遣スタッフの方が退職したいと考える機会も正社員の方と比べて多くあるのも確かだと思います。精神的に限界だと言うことから退職代行サービスに依頼されることも私は自然な流れだと思います。
退職代行のリスクとは①やめられないケース、②損害賠償を受けるケースの2つが考えられます。
また、補足的に③社宅時の問題についても検討します。

目次
1.派遣の退職代行にあたってのリスクについて
①について
まず期間の定めがない場合には、民法627条第1項により14日経過後が退職日となります。14日間については全て欠勤させることもできますので、入社からそれほど経っていない試用期間であっても退職ができます。有給消化をさせる場合でもそのまま退職にもって行くケースが多いです。
次に、雇用の定めがあるパターンがあります。例えば、4月1日から5月末日までを雇用期間とする場合があります。
この場合に、4月16日に退職したいケースでは、民法628条本文により退職するには、『やむを得ない事由』が必要となります。やむを得ない事由とは、退職するにあたって、退職者に帰責できない事由にあたります。具体な代表例としては、体調不良などがあります。
したがって、期間の定めのある退職代行の場合には、やむを得ない事由があるかなどの検討を弁護士としてする必要があります。
※もっとも、派遣の場合には、やむを得ない事由を検討しなくともスムーズに退職代行で退職できるケースは多いです。
契約期間のある派遣スタッフについては、第129回『期間の定めのある雇用契約と退職代行』について、をご参照ください。
②について
派遣スタッフの方が退職代行する場合に、損害賠償を受けるか否かはそこまで心配する必要はありません。
派遣の特性としては、人の手配は経営者の責任であるからです。
派遣スタッフの損害賠償については、第10回「派遣社員と退職」及び「派遣社員の退職と損害賠償」について、をご参照ください。
補足事項として③社宅時の問題があります。
派遣の方は社宅に入居されているケースは多くあります。社宅の退去時に立ち会いを求められるケースもあります。
※私が行う退職代行では、社宅の立ち会いを拒否します。拒否にあたっては、依頼者に事前にアドバイスします。
社宅の退去については、第58回『弁護士による退職代行と社宅(社員寮)の退去及び退去時期』について、をご参照ください。
2.まとめ
元々、工場、介護、事務の派遣などは多かったですが、最近では、派遣で現場監督を行うことは可能となり、現場監督を派遣で業務を行うことが増えました。
その派遣内容としては、工程管理や品質管理といった施工管理業務に限定されているものの、企業間では大きなお金が動いています。そのため現場監督の派遣では、引き留めが横行しています。
また、SESの業務を派遣の形で行っている場合もあります。看護師の派遣も増えています。
派遣業務は様々な形態になっています。退職についてお困りでしたら私までご相談ください。力になります。
・参考コラム
第59回『弁護士による退職代行と常駐型SESの退職と損害賠償』について
・参考条文(民法)
第627条第1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者

弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。