弁護士コラム

第183回

『医師(心療内科)と提携した退職代行サービスの何が悪い???』について

公開日:2025年10月27日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第183回は『医師(心療内科)と提携した退職代行サービスの何が悪い???』についてコラムにします。

目次

1.退職代行会社と医師との提携について

先日の某退職代行会社が非弁行為の疑いで、警視庁から家宅捜索を受けた事件は皆さんの記憶に新しいと思いますが、その際、某退職代行会社と心療内科の医師が提携していた件で話題になっています。

退職代行会社と心療内科が提携するメリットについて、今回私の思うところを書いてみます。退職代行会社は、退職したい会社に対して、「退職したい旨」の伝言を行います。

その際、退職の交渉が出来ないため、「適応障害」「うつ病」の診断書があれば、会社側も納得することも多く、そのための「退職をスムーズにさせる」材料として「医師との提携」が役に立つと考えられます。

また、期間の定めのある雇用契約の場合には、退職にあたって「やむを得ない事由」が必要な場合があり、その「やむを得ない事由」のために診断書を提出する場合があるので、その「やむを得ない事由」に診断書を使えるメリットも考えられます。

さらに、退職にあたって、会社が依頼者に対して「損害賠償請求」をしてくる可能性がある場合に、債務不履行上、「債務者の責めに帰することができない事由」がある場合には、損害賠償請求が成立しない可能性もあるため、その「債務者の責めに帰することができない事由」のために診断書を取得するメリットがあることが考えられます。

では、その医師の提携が悪いかと言えば、まったく悪い訳でもなく、実際に診療が必要される方が心療内科にアクセスできるという紹介を受ける側のメリットがあります。提携のすべて悪い訳ではないですが、以下のようなデメリットもあります。

提携をしている医師としては、仮に、診断の結果、「適応障害」「うつ病」にあたらない場合でも「その提携先」に対して忖度をして、診断書を作成する可能性も否定できません。

また、しっかりとした診察を行わないで、「適応障害」「うつ病」で診断された診断書を会社に発行したとしても、仮に、裁判になった場合には、その「診断書」ではなく、「診察内容」がどのような診察であったかどうかを裁判所が判断します。

その際、診断書のみならず、「カルテなど」の提出を行うことが一般的ですので、その診察内容が重要になります。あくまでも、注意して頂きたいのが、忖度した「診断書」を出すことが重要ではなく、その「診察内容」になります。

2.まとめ

弁護士として退職代行サービスを運営している関係で、心療内科のクリニックから私の方に営業メールを頂く機会が多くあります。

弁護士事務所が心療内科のクリニックと提携することで得られるメリットについては、特にありませんが、実際に治療が必要な依頼者に対して、おすすめすることやご紹介することもあります。

もっとも、私は、依頼者の紹介は行いますが、心療内科のクリニックと提携することは考えておりません。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。