弁護士コラム

第170回

『任意継続被保険者と退職代行サービス』について

公開日:2025年9月29日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第170回は『任意継続被保険者と退職代行サービス』についてコラムにします。

目次

1.任意継続保険加入のメリット

任意継続とは、健康保険の加入者が退職後に特定の要件を満たせば、最長2年間、これまでと同じ健康保険に個人で継続して加入できる制度を言います。

特定の要件は、①退職前の被保険者期間が2ヶ月以上あり、②退職日翌日から20日以内に手続きを行うこと、が必要となります。

繰り返しますが、任意継続の特徴は、退職時の健康保険に継続して加入できることになります。

任意継続し健康保険に加入できるメリットとしては、一定の条件として保険料が安くなることにあります。

※過去には、退職後の1年間の継続要件を満たさない場合に、任意継続をし、健康保険に加入することで退職後の傷病手当金申請をスムーズに行う手段として有効な制度として機能していた制度的な歴史がありました。しかしながら、現在では、この制度は廃止されました。

よって、現在では、国民健康保険料と任意継続の健康保険料とどちらが安くなるという問題に尽きます。

国民健康保険料と健康保険料のどちらが安いかについては、役所の窓口に聞くのが正確ですが、一定の目安があります。

任意継続の平均報酬月額は、32万円になっています。例えば、退職時の月の給与が48万円であった場合に、平均報酬月額の32万円を超えているため、保険料が32万円として計算されます。この32万円以上の給与を貰ったいたかどうかが退職時に任意継続を選択する目安になります。

任意継続の保険料は、退職時の給与明細をご準備して、毎月の控除される健康保険料の控除欄をチェックしてください。

任意継続の保険料は、会社負担分と本人負担分を退職者自身で負担しないとならないため、給与明細の健康保険料を2倍してください。その2倍した額が任意継続時の保険料になります。

※介護保険料を徴収されている40歳から65歳の加入者は、介護保険料についても2倍した額もプラスされます。

逆に言えば、退職時の給与月額が32万円以下であった場合には、任意継続を選択するメリットは低いと私は思います。
なぜなら、国民健康保険料の方が安いため、あえて保険料の高い任意継続保険を選択する必要がないからです。

2.任意継続保険から国民健康保険に切り替えのタイミングについて

最適化の提案

任意継続保険は、退職時から2年間継続ができます。しかしながら、国民健康保険に切り替えた方がお得なタイミングがあります。国民健康保険料の計算は、毎年1月から12月の所得で決定し、翌年6月分から保険料が更新されます。

例えば、令和7年1月に退職し、退職時の給与が48万円だったことから、任意継続加入をした場合で、令和7年2月から12月まで傷病手当金、または、失業保険を受給した場合には、令和7年2月から12月までは、所得がないことになります。

したがって、令和8年6月からの国民健康保険料が著しく安くなります。
まとめると、令和8年6月から国民健康保険に加入した方が保険料が安くなります。

また、国民健康保険に加入した段階で保険料の減額、または、減免が認められる場合があります。

すなわち、任意継続保険には、減免の手続きはないものの国民健康保険料には、減免の手続きがあります。減免が適用されるのであれば国民健康保険料の方が安くなる場合があります。

※国民健康保険料の減額、または、減免については、離職票の退職区分で判断されることも多く特定理由離職者、就職困難者、会社都合退職の場合があたります。

※減免の内容は自治体によって異なりますが、最大5~7割減額されるケースもあります。

例えば、年間の保険料が30万円だった方が、減免により10万円以下に抑えられるケースもあります。また、多くの自治体では、退職の翌年度末まで(3月末)を減免の対象期間としています。

たとえば、2025年7月に退職した場合、2026年3月末までが減免の対象期間となるケースが一般的です。

3.まとめ

任意継続加入の注意点として、退職時から20日以内に加入手続きをしないとなりません。退職時から20日以内に手続きするのはかなりタイトなスケジュールになります。

場合によっては、なかなか退職時に社会保険喪失手続きをしない会社もあります。その際、弁護士による退職代行を利用することでスムーズに退職手続きをするように会社に対して強く催促をかけます。

また、退職代行サービスを依頼したタイミングでご自身の加入している保険者に対して任意継続加入にあたっての書類を事前に取り寄せる電話連絡をする必要があります。その際、任意継続する旨を伝えて今後の予約などを予め行うことも必要です。

私の方で退職代行を行うにあたっては遠慮なく任意継続加入の希望を伝えてください。会社に対してスムーズに対応するように強く伝えます。任意継続加入と退職代行サービスでお困りでしたら私までご相談ください。

・参考コラム

第60回『弁護士の退職代行と退職時の給付金が最大200万円?』について

第62回『弁護士による退職代行と社会保険給付金サポートが最大500万円が受け取れるは本当か!?』について

第63回『弁護士による退職代行と失業保険給付金サポートが最大100万円が受け取れるは本当か!?』について

第154回『退職給付金(就職困難者のパターン)と弁護士の退職代行で最大200万円?を受給する方法』について

第155回『【相談窓口】退職給付金サポートと弁護士の退職代行』について

第161回『自衛官のための退職給付金サポートと退職代行』について

第168回『公務員の退職給付金サポートと弁護士の退職代行【相談窓口】』について

第169回『弁護士による再就職手当は一括でもらえる?就業促進定着手当申請サポート【相談窓口】』について

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。