弁護士コラム
第211回
『【弁護士が解説】退職代行時の貸与品の取り扱い』について
公開日:2026年1月16日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。
その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第211回は『【弁護士が解説】退職代行時の貸与品の取り扱い』について解説します。
令和8年1月8日「テレビ朝日スーパーJチャンネルに清水弁護士が出演しました。
あけおめ退職について解説しました。
目次
1.貸与品を管理する義務とは
退職代行時の『貸与品』の取り扱いについてご質問を頂くことが多いので、今回のコラムで『貸与品』の注意点について解説します。
退職代行時に会社からの貸与品をどのようにするかについては、法律に従って対応する必要があります。貸与品とは、文字通り会社が従業員に『貸している』物です。
従業員は、雇用契約の一内容として、貸与品を適切に管理する義務があり、その管理義務の一環として、貸与品を適切に返却する義務があります。
本来的に、退職時には、貸与品を職場に置いてくれば問題はありませんが、手元にあるケースや郵送にて送付する必要になるケースもあります。
場合によっては、管理責任として、職場に置いてくることが適切ではなく、郵送にて返却することがむしろ適切であることもあります。
返却方法はケースバイケースです。そこで、前半部分で、返却方法について解説し、後半では、返却費用の負担について解説します。
2.貸与品の返却方法について
本来的には、退職日までに、職場に行き、その場で貸与品を返却すれば問題はないのですが、退職代行時には、職場に出向かないのが原則となります。したがって、貸与品の返却のタイミングをどのようにするかが問題となります。
「1」の内容を繰り返しますが、退職者には、貸与品を適切に返却する義務があります。返却義務としては、最終出社日に貸与品を適切に置くことで、その返却義務を履行したと言えます。その履行をもって義務を全うしたと言えます。
その一方で、適切に職場に置いてこれないケースもあります。その際には、郵送にて貸与品を返却したことで、その返却義務は満たされたことになります。簡単に言えば、郵送でも問題ないということになります。
3.送付費用の取り扱いについて
では、郵送での返却する際には、郵送代は、退職者と会社のどちらになるかという論点があります。最近では、退職者が負担するというのが一般的な流れになりますが、理論的に考えると以下のようになります。
繰り返しますが、雇用契約の一内容として貸与品を適切に管理し、返却する義務があります。返却する義務は本来的には、職場に持って行けば良いのですが、退職者側の理由で貸与品を職場に持っていくことができない場合には、その義務は義務履行者、すなわち、退職者側で費用負担することが必要になります。
民法上規定でも、貸与品の返却義務とは異なりますが、民法485条の本文で「別段の意思表示がないときは、義務を果たす側」が費用負担することが規定されています。
なお、別段の意思表示とは、会社側が着払いにて送付することを承諾した場合を想定しています。
4.貸与品を毀損し、紛失した場合について
今回はより貸与品について深く掘り下げていきます。では、貸与品を毀損・紛失した場合には、その費用負担をどのようにすべきでしょうか?
故意、または、故意と同視し得る重大な過失があった場合には、その費用負担は、全額退職者が負担するのが相当と言えます。次に、過失で、貸与品を『毀損・紛失』した場合には、退職者は、信義則上相当な範囲の費用負担をすべきということになります。
民法715条の使用者賠償責任に関する判例で用いられている「信義則上相当な範囲」での求償請求とパラレルに考えることできます。
信義則上相当な範囲とは、本来的には、利益のあることに責任があるという報償責任の原則という考えが及ぶため、損害の全額を退職者に負担させることが信義則上相当な範囲に限定されるというものであり、諸般の事情から判断します。
その一方で、信義則上相当な範囲とは、一応の目安として、損害額の25%から50%の範囲と考え、その25%から50%の範囲については、毀損態様、紛失態様、その貸与品の金額、会社の指導状況など諸般の事情から判断されると考えられます。
なお、損害額とは、その貸与品を買い替える金額そのままではなく、仮に、耐用年数や減価償却なども考慮されますので、損害額自体についても争うとより難しい議論が出てきます。
5.まとめ
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者
弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。